歯科心身症について

対象となる症状

どんな症状を診てもらえますか?

歯医者に行っても異常ないと言われた。何回も治療したが治まらない。そういった、治りにくい、お口の痛みや不快感など、お口のお悩み全般を対象とします。

例えば、原因不明の舌痛や歯痛など痛みの患者さんを中心に、味覚異常や口腔乾燥感なども合わせると、歯科患者全体の10%前後存在すると言われています。

その他、被せ物をいくら調整しても適応できない患者さんや、自己の口臭や歯科治療に対する恐怖が過度に強い患者さんなども珍しくありません。

症状の分類

症状の分類グラフ
約7割りが原因不明の痛みに関連した症状です。

痛みの問題

  • 舌痛症 … 舌など口腔粘膜のヒリヒリピリピリした慢性痛
  • 非定型歯痛 … 歯科治療後も長引く歯牙、歯肉、顎顔面の慢性痛

不快感・異常感の問題

  • 口腔異常感症(口腔セネストパチーを含む) … 口腔内のネバネバ、ベタベタ、ザラザラ、異物感、乾燥感、など触覚に関わるものや、異味覚など味覚に関わるもの
  • 咬合(かみ合わせ)異常感 … 歯科で何度も修正しても治らない咬合や義歯の違和感

その他の問題

口臭恐怖症、歯科(治療)恐怖症

歯科心身症はメンタルの病気?それは大きな間違いです。

歯科心身症は従来の歯科治療では治らない「歯科的症状」です。
患者さんが「して欲しいこと」に対し、いかに懸命に虫歯や歯周病、義歯の治療を施しても治らずに立ち往生してしまいます。

逆に処置を繰り返す程、難治化することもしばしばです。
目に見えない「歯科的症状」へのアプローチが必要なのですが、「歯科的に問題ない」=「精神科」とは言えないのです。歯科的な病気が認められず精神科に紹介しても、「精神科的には問題ない」と送り返されてしまう場合がほとんどです。

口腔異常感症の患者の脳機能画像

では、このような口腔感覚の乱れや過敏が起きている患者さんの中では、一体何が起こっているのでしょうか。
現在では、抹消から中枢にかけての神経と神経の繋がり部分の化学的な障害や、情報処理過程の歪みにつながる高次な脳の機能のアンバランスなども想定されています。

その証拠の一つとして、脳機能画像検査の一つで脳血流のアンバランス(図)が認められたとする報告もあります。

歯科心身症の方が多い年齢・性別

中高年層の女性がメインの年齢層です。
性格は真面目で几帳面な方が歯科新診療と診断される傾向にあります。

歯科心身症のメカニズム

患者さんの中で、一体何が起こっているのか

  • 連合野における情報処理過程の歪み 思考や記憶など高次脳
    連合野における情報処理過程の歪み
  • 神経伝達物質レベルの障害 5-HT ,NA ,DA ,etc .

患者はウソをついているのでも、メンタルのせいでもなく、脳の中で「そう感じるようなエラー」が生じている

脳の中

歯科心身症の治療

歯科心身症の患者さんでは、総じて通常の歯科治療を繰り返すほど、その症状は治りにくくなってしまいます。

その根底にひそむ「歪んだ口腔感覚」を修復せずに、いくら口腔内の処置を熱心に行っても治療は成功しません。

また、安易に心理的な問題に介入するより、口腔感覚の安定を図ることが大切です。
まずは歯科治療を中止して無用な刺激を遮断した上で、鎮痛補助薬などによる薬物療法を行います。

口腔感覚の安定を得た後なら、通常通りの歯科的処置がスムーズに遂行できます。
その上で「歯が原因」「歯のせいで全身的不調が生じている」などといった誤った認知(考え)や行動に対する修復技法(心理療法)も併用します。

しかし、注意が必要なのは口腔感覚の不調は、いろいろな原因で起こりうるということです。
稀にうつ病や統合失調症の患者に生じることもあれば、震災のような過酷な状況とパーソナリティの限界から不調になることもあります。このようなケースでは、精神科医との連携が必須になります。

歯科心身症の治療戦略

治療実績について

治療実績グラフ

参考までに院長在籍の東京医科歯科大学での治療成績を示します。約7割の方で改善が得られています。
不快感の患者さんより、痛みの患者さんの方が比較的良い治療成績となっています。