舌痛症の症例

舌痛症について(3)他に舌に痛みが出る病気は? 2016.10.08

みなさん、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか?

舌痛症についてですが、前回に引き続き、舌に痛みが出る病気について書いてみます。

歯や被せ物に鋭利な部分があったり、誤って噛んだりして、舌に傷ができると痛みが出ます。こういったものは一時的で、傷の治りとともに舌痛も収まります。微妙に表面が荒れた仮歯が装着された場合は、仮歯の期間が長くなると傷が出来て、慢性的に外傷性の痛みが続く場合もあります。ただし、この写真のように、荒れた範囲がはっきりしない場合もあり、癌ではないか慎重に経過を観なければなりません。

その他に、慢性的な舌痛を起こすものには、どんなものがあるのでしょうか。代表的なものは、口腔乾燥症、口腔カンジダ症、地図状舌、貧血、鉄欠乏といったところでしょう。

 

上の写真の左の舌には、白色の苔のようなものが見えます。ガーゼで拭える典型的なカンジダ症によるもので、高齢者、義歯の使用、癌や感染症の影響で免疫力が低下している時などに出現します。また、このような典型的な白色の苔が見られないものあります。右の写真のように口角炎をおこす場合も要注意です。カンジダ菌自体は口腔内の常在菌ですので、菌があれば病気というわけでなく、舌の痛みなど症状があれば治療するということになります。通常は抗真菌薬の軟膏を処方します。

上の写真は、舌の表面が赤く、表面の細かい凹凸が無くなり、平らに見えます。口腔乾燥症の一部にはこのような舌になる症例もあります。刺激物でしみたり、ヒリヒリとした舌痛も出現します。口腔乾燥の原因になる唾液量の流出低下は、向精神薬など各種薬剤の内服でも出現します。この症例もその影響が大きいと思われたため、精神科の先生に処方の調整をご相談しました。

次の写真は、地図状舌です。地図のように、白い縁取りのある、赤みがかった斑紋がまだらに出現します。食べ物がしみるなど痛みが出現することが多いです。右の症例は、溝のような亀裂が目立ちます。溝状舌と言われるものですが、これ自体は痛みがない場合がほとんどです。教科書的にも特効薬は無いとされており、うがい薬や軟膏を使用で様子を見ることが多いです。近年、内服薬の処方で劇的に改善する症例も報告されております。

最後の写真は、平滑舌という鉄欠乏性貧血によるものです。文字通り、舌の表面が平滑化し赤くなっています。鉄剤内服などの治療で改善しない場合、「舌痛症」としても治療も平行して行います。

今回挙げたものは、「舌痛症」というより、カンジダ症や口腔乾燥症という本来の病名で治療されるべきと考えています。ただ、真の「舌痛症」の併存がある症例も多いため、その場合は治療も平行して行います。当院も、このような口腔粘膜疾患にも対応しております。

舌痛症について(2)どのように診断されるの?癌では 2016.10.04

みなさんこんにちは。いかがおすごしでしょうか。

今回も舌痛症について書いていきたいと思います。

前回は症状についてご説明しました。患者さんの訴えに似たような症状が多くありましたが、これらの訴えがあれば全て舌痛症ということでもありません。

まず、局所的な器質的疾患や全身性の疾患から生ずる二次性の舌痛は除外しなければなりません。

どういうことかといいますと、他の病気が原因で二次的に、舌やお口の粘膜に痛みが生じる場合があるということです。

口腔がん、カンジダ症や扁平苔癬などの口腔粘膜の病気、口腔乾燥症、歯の被せ物や歯牙の鋭縁が挙げられます。また、鉄や亜鉛の欠乏や、甲状腺疾患など全身疾患からお口の症状が出ることもまれにあります。

これらの多くはX線検査や血液検査、病理検査といった、「検査」により病気が確認できるものです。診断のベースとなる問診、視診、触診を丹念に行い、このような病気が疑わしい場合は、このような検査を追加して除外する必要があります。

中でも最も重要なのが癌の鑑別です。実際、長らく痛みが続くため、癌ではないかと心配になる患者さんも多いのですが、舌痛症と癌は全くの別物です。舌痛症の方が癌になりやすいというデータもありません。

以下の写真は東京医科歯科大学での症例ですが、舌痛症と間違われて受診された患者さんのものです。写真1のように、表面がただれて、でこぼこしている、病変の境界がはっきりしていない、周りが硬い、など特徴的な所見の場合はよいのですが、写真2のように一見すると傷のようなものと思い込んでしまうものあり細心の注意が必要です。

院長は口腔外科での研修歴があり、細胞診までは行いますが、診断確定には生検による病理診断を行わなければならず、専門医の先生にお任せしなければなりません。ちなみに生検とは、麻酔をして針やメスで組織を採取することです。

細胞診は、この写真にあるような歯間ブラシを使って、専用の容器を使用して検査に提出します。麻酔も必要なく、痛くもなんともありません。

ちょっと、怖い話になりましたが、本当に頻度は低いのであまり心配なさらないでください。舌痛症の疑いの患者さんの中で、癌が疑われる方ははっきりしたデータではなく経験的なものですが、1%に満たない印象です。確率が低いからこそ見落としは無いようにしっかり診察しなければいけません。当院では、舌痛症と診断された後でも、舌を含めてお口の中の診察はしつこく行うようにしています。

舌痛症について(1)どんな症状? 2016.09.30

こんにちは、みなさんいかがすごしでしょうか?

さてさて、今回から、当院でも一番患者さんの多い「舌痛症」について、書いてみたいと思います。

どんな症状ですか?

舌を中心に持続性の“ヒリヒリ,ピリピリ”とした慢性の痛みを訴えます。

舌だけでなく、口びる、口蓋(上あご)の粘膜や歯肉に同様の症状が生じる場合もあります。

食事や会話にはほとんど支障がなく、一人でじっとしているときの方が悪化します。

朝より夕方から夜間に悪化するなど一日の中でも、また日によっても変動があります。

また、香辛料や熱いものなど刺激の強い物の摂取や、ストレス、疲労、睡眠不足などで悪化します。

痛みに加え違和感も

痛みに加え、口腔内の「ネバネバ」、「ベタベタ」、「ザラザラ」などのお口の乾燥感や、「味がわかりにくい」、「おいしくない」、「苦味や甘い味がする」といった味覚の異常、「膜が張ったよう」など異物感に近い症状を併発することもあります。

問診票に書かれた具体的な症状

直近10名の患者さんの問診票から、実際に患者さんが訴えた症状を挙げてみます。ほぼ原文のままですが、経過などは一部省いています。

・『舌がざらざら、ピリピリ。苦い。くちびるのまわりもヒリヒリ。口内炎もできやすい。舌を噛みやすい。』

・『舌がヒリヒリ、ピリピリする。』

・『昨年末より舌のピリピリ感があります。(火傷した時のような感じ)』

・『一日中、舌のまわりや舌先がビリビリする』

・『舌のかわきから、舌のヒリヒリ感と上顎のヒリヒリ感が併発。舌苔もある』

・『口内の痛み、渇き、舌の痛み、口内の張り付き等の不快感、』

・『舌の左奥が切れている感じで痛い。(しみる感じ)。舌の先が前歯にあたり、あとがつく。口の中がネバネバする。歯ぎしり、舌苔、口臭がきになる。』

・『舌の疼痛と違和感。常に舌の存在を意識しなければならないこと』

・『口の中がしびれている。歯のかみ合わせが合っていない。つばを飲み込みにくい。舌や舌があたる上あごが痛い。辛い。舌がふくらんだかんじがする。味がわからない。』

・『口の中、特に上あごの裏がピリピリしている。』

十人十色ですが、似たような訴えの方がかなり多いのがわかります。

まだまだ舌痛症の解説は続きますが、次回以降のお楽しみに。

(1)舌痛症について改修案 2015.04.20

こんにちは、みなさんいかがすごしでしょうか?

さてさて、今回から、当院でも一番患者さんの多い「舌痛症」について、書いてみたいと思います。

どんな症状ですか?

舌を中心に持続性の“ヒリヒリ,ピリピリ”とした慢性の痛みを訴えます。

舌だけでなく、口びる、口蓋(上あご)の粘膜や歯肉に同様の症状が生じる場合もあります。

食事や会話にはほとんど支障がなく、一人でじっとしているときの方が悪化します。

朝より夕方から夜間に悪化するなど一日の中でも、また日によっても変動があります。

また、香辛料や熱いものなど刺激の強い物の摂取や、ストレス、疲労、睡眠不足などで悪化します。

痛みに加え違和感も

痛みに加え、口腔内の「ネバネバ」、「ベタベタ」、「ザラザラ」などのお口の乾燥感や、「味がわかりにくい」、「おいしくない」、「苦味や甘い味がする」といった味覚の異常、「膜が張ったよう」など異物感に近い症状を併発することもあります。

問診票に書かれた具体的な症状

直近10名の患者さんの問診票から、実際に患者さんが訴えた症状を挙げてみます。ほぼ原文のままですが、経過などは一部省いています。

・『舌がざらざら、ピリピリ。苦い。くちびるのまわりもヒリヒリ。口内炎もできやすい。舌を噛みやすい。』

・『舌がヒリヒリ、ピリピリする。』

・『昨年末より舌のピリピリ感があります。(火傷した時のような感じ)』

・『一日中、舌のまわりや舌先がビリビリする』

・『舌のかわきから、舌のヒリヒリ感と上顎のヒリヒリ感が併発。舌苔もある』

・『口内の痛み、渇き、舌の痛み、口内の張り付き等の不快感、』

・『舌の左奥が切れている感じで痛い。(しみる感じ)。舌の先が前歯にあたり、あとがつく。口の中がネバネバする。歯ぎしり、舌苔、口臭がきになる。』

・『舌の疼痛と違和感。常に舌の存在を意識しなければならないこと』

・『口の中がしびれている。歯のかみ合わせが合っていない。つばを飲み込みにくい。舌や舌があたる上あごが痛い。辛い。舌がふくらんだかんじがする。味がわからない。』

・『口の中、特に上あごの裏がピリピリしている。』

十人十色ですが、似たような訴えの方がかなり多いのがわかります。

まだまだ舌痛症の解説は続きますが、次回以降のお楽しみに

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