論文紹介(不正咬合、薬剤性開咬に関する論文です)

皆さんこんにちは。

ご無沙汰をしておりましてすみません。

コロナが落ち着きつつある中での5月の連休も終わり、いかがお過ごしでしょうか。
銀座も4月からは海外からの観光客も増え、人手はコロナ前に戻ってきている感じがします。

 

さて、久しぶりに論文をご紹介いたしますが医療従事者向けの内容になります。

”Case series of drug-induced open bite: Extrapyramidal symptoms related to psychotropic medications”という題名で、薬剤性開咬に関するケースシリーズ研究です。

開咬の原因の一つに咀嚼筋の過緊張がありますが、そうした筋緊張の原因が薬剤の影響で起きることがあるというものです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10086329/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10086329/pdf/fpsyt-14-1137917.pdf

開咬の程度は、前歯部のみのものから、第2大臼歯の1歯のみ接触している症例まで様々のようです。

大学の外来で10年間で11例ですので、決して頻度は高くは無いのですが、歯科医は知っておくべき内容と思い今回取上げさせて頂きました。

 

このケースシリーズに先立ち、2022年に佐賀県の歯科矯正専門医が出された症例報告も大変興味深い内容です。

”Case report: Open bite as an extrapyramidal side effect with aripiprazole, a dopamine partial agonist”

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10086329/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10086329/pdf/fpsyt-14-1137917.pdf

この症例は、10代で歯科矯正治療を終えられ、定期観察を行っていた20代に精神疾患で服薬治療を受けている経過で開咬が生じたもので、その開咬の様子が口腔内写真できれいに観察できる貴重な報告です。

薬剤の影響も用量依存性が伺え、減量とともに開咬が改善していった様子が一目瞭然です。

 

これらの報告にあります様に、原因不明の不正咬合の症例に遭遇した場合は、補綴や矯正治療を検討する前に、精神科での治療歴や服薬内容の確認を怠らないようにしたいものです。

薬剤性が疑われる場合は、積極的に精神科主治医との情報交換を行い、慎重に経過を観察していく必要があります。

 

院長