論文紹介:口腔内の異常感覚に対する三叉神経血管圧迫の影響に関する論文(Clinical Characteristics of Predominantly Unilateral Oral Cenesthopathy With and Without Neurovascular Contact)

皆さんこんにちは。

コロナが何とか収束してきておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、久しぶりに論文を紹介したいと思います。
一般の方には専門用語で難しいかもしれませんがご容赦ください。

口腔内の異常感覚に対する三叉神経の血管圧迫の影響に関するもので、大変興味深い論文です。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fneur.2021.744561/abstract

従来、三叉神経の血管圧迫(Neurovascular contact=NVC)は主に三叉神経痛、非定型歯痛、顔面痛など「痛み」に焦点があてられておりました。
今回の論文は、三叉神経のNVCが口腔異常感や口腔セネストパチーと呼ばれる口腔内の異常感覚にも影響しているのではないかという仮説に関するものです。
三叉神経は痛みだけでなく、熱、触覚、圧力などの感覚を伝達するため、三叉神経のNVCが口腔内の異常感覚の原因になる可能性があるというものです。
臨床的には片側性の症状は特にNVCの存在を疑うのですが、本研究も片側性の異常感覚の症例について調べたものです。

結果、片側性の異常感覚の患者の約半数に三叉神経のNVCが観察されました。
これは、片側性の「痛み」の症例に含まれるNVCの割合とほぼ同じです。
さらに、NVCを持つ患者に比べて、NVCを持たない異常感覚の患者は、より複雑な口腔症状を呈し、日常生活での重症度や機能障害もより高くなっていました。
以上から、NVCが何とも言えない不快な口腔内の異常感覚を引き起こす可能性がある一方で、
NVCを持たないOC患者にはより複雑なメカニズムが存在し、それによって口腔内の症状が大きく変化しより耐え難いものになっている可能性を示唆していると考察しています。

NVCの有無による治療内容や予後への影響など、さらなる研究にも期待したいと思います。
また、歯痛や顔面痛など「痛み」の方に加えて、片側性の口腔異常感覚の方もNVCの影響の可能性を常に念頭において診療すべきと再認識しました。

院長