歯科心身症の改善ロードマップ(治療の流れ)
痛みや違和感が改善するまでの治療の流れ
歯科心身症とは、歯や舌・口腔内に明らかな異常が見つからないにもかかわらず、痛みや違和感などの症状が続く病態をいいます。
代表的なものとして
- 舌痛症(舌のヒリヒリ・灼熱感)
- 非定型歯痛(歯が痛いのに異常がない)
- 口腔異常感症(口の中の違和感)
- 咬合異常感(かみ合わせの不快感、異常感)
などがあります。
症状が現れる場所は異なりますが、口の感覚を司る神経の働きの乱れという共通するメカニズムに起因していると考えられています。
当院では、こうした神経の働きや活動を整えることを目的として治療を行っています。
なぜ通常の歯科治療では改善しないのか
歯科心身症では、歯や舌・粘膜に明らかな病変が見つからないことがほとんどです。
しかし患者さんには痛みや違和感は確かに存在し、リアルに感じています。
これは「口の感覚を脳へ伝える神経」が誤作動や過敏が起こり、痛みの感覚や不快感を感じやすい状態になっているためです。
この状態で歯科治療を繰り返したりするなど、外部からの刺激を受けたり、患者さんが自ら原因を探し続ける習慣などが継続すると、
刺激 → 感覚の過敏 → 症状の固定化
という悪循環が起こります。
当院では、まずこの悪循環を止めることを重視して治療を考えます。
改善までの5つのステップ
STEP1 不要な刺激を止めるために生活習慣の見直し
最初に行うのは、口の中への過剰な刺激を止めることです。
繰り返される歯科治療、過度な口腔内へのセルフチェック、気になる箇所への舌接触などによる確認行為、舌や歯の感覚への意識集中などは、症状を悪化させたり、長引かせる原因になります。
このような病態を理解して頂くことから始め、口腔への刺激を減らし、感覚の神経が落ち着く環境を整えます。そのためには、日常生活における様々な生活習慣の改善が重要になります。
STEP2 神経の過敏、誤作動を整える(薬物療法)
併せて、乱れた神経の働きを落ち着かせる薬物治療を行います。
ここで使用するのは一般的な鎮痛薬ではなく、神経の働きを落ち着かせ、感覚の過敏さを和らげる薬です。
患者さまの状態に合わせ、漢方、神経痛薬、抗うつ薬など様々なお薬から、ご希望に沿いながら選択します。用量も極めて少量から慎重に調整していきます。多くの方が添付文書の用量の1/3から半分以下の量で済んでいます。
STEP3 歪んだ口腔感覚の修復
症状が長く続いていると、脳が「口の中は不快な場所だ」と学習してしまい、口腔感覚の乱れ、歪みが固定化してしまっています。
上述のSTEP1、2が行われると、徐々に、口腔感覚が正常に戻っていきます。多くの方が約数か月かけて症状の変化を感じていきます。
STEP1、2が両輪となり、固定化した口腔感覚の乱れが修復されることが歯科心身症治療の中心となる重要な部分です。
STEP4 不安・思考・行動の悪循環を整える
これは、最初のSTEP1がスムーズに進むためにも重要ですが、お口の痛みや不快感を生じる方は、元々「心配性」の方が多いようです。
- 重大な病気ではないか
- 歯や噛み合わせが原因ではないか
という不安は受診前に限らず、治療の途中でもことあるごとに強くなります。
このような、不安、あるいは不安に対処する行動が、神経をさらに過敏にするため、必要に応じて心理的アプローチを行います。
状況によって、不安や、抑うつなど、メンタルの症状が強い場合は、逐次、連携する精神科・心療内科と連携することがあります。
STEP5 口腔機能の安定と歯科治療の再開
口腔感覚が安定すると、必要な歯科治療やメインテナンスを安全に進められるようになります。
この段階では再発予防と生活の安定を目指します。
安定が得られれば、治療終結に向けて服薬の減量を開始していきます。
改善までの目安期間
症状の程度により個人差はありますが、多くの患者さまは次のような経過をたどります。
- 数か月〜6ヶ月:症状の変化を実感。早い方は1-2か月で改善する方もいます
- 3〜12ヶ月:症状の安定
- 12〜18ヶ月:再発予防・生活の安定
患者さんや症状によって違いがあります。長く続いた症状ほど、回復には時間が必要です。
医療連携について
歯科心身症はさまざまな要因で起こります。
必要に応じて
- 内科
- 精神科・心療内科
- ペインクリニック
- 歯科領域の専門医(根管治療、補綴、インプラント、歯科矯正、口腔外科など)
など、各科専門医と連携しながら治療を進めます。
最後に
歯科心身症は「どこに相談すればよいか分からない」症状の代表です。
しかし、適切な診断、適切なステップで治療を進めることで、改善を目指すことができます。
一人で悩まず、まずはご相談ください。
