歯科心身症によくある質問

歯科心身症に関する全体的な疑問

舌がヒリヒリするのに、歯医者では「異常なし」と言われました。なぜでしょうか?
見た目やレントゲンで異常がない場合でも、お口の中に痛みが送ることがあります。舌の場合は舌痛症や口腔灼熱症候群とよばれるもので、特殊な神経痛と考えていただくとよいでしょう。原因ははっきりわかっていませんが、痛みの感覚の神経の誤作動や過敏によっておこると考えられております。異常が「見えない」ことと、「存在しない」ことは別です。私たちは“見えにくい痛み”を診るための訓練を積んでいます。
「心の問題」と言われましたが、そう言われると余計つらいです
目に見えない、原因不明の症状を、「ストレス」、「心の問題」などと片付けられてしまうことがあります。「あなたが感じている痛みは、決して「気のせい」ではありません。むしろ、心と体の密接な関係を丁寧に理解しないと、適切な対応はできません。当院では“症状”ではなく“あなた自身”を診ています。
歯の神経を取ったのに痛みが続きます。どういうことですか?
痛みを感じる神経が、口の中から顎を通って脳まで達しています。神経を取っても、原因不明の痛みが続く場合は、その神経の脳の中での働きが、“乱れ”や“誤作動”が起きて、痛みの信号が出続けてしまうことや、まれに“脳が痛みを記憶している”ような状態になってしまうことが起こっていると考えられています。これは精緻な人間の感覚の神経の働き、反応としてはそうめずらしいことではありません。複雑な痛みの原因を整理しながら、一緒に進めていきましょう。
何科に行けばいいのか分かりません
舌に何も異常がないのにヒリヒリと火傷のような痛みが続く「舌痛症」や、歯の痛みなのに歯や顎に異常が見つからない「非定型歯痛(非歯原性歯痛)」など、歯科心身症に詳しい歯科医に相談するのが近道の一つです。耳鼻科、心療内科や神経内科など医科に紹介が必要なケースもありますが、その判断も含めて当院にご相談ください。
大学病院と個人の歯科医院、どちらがいいですか?
大学病院、診療所のどちらにもメリット・デメリットがあります。当院では、経験を充分に積んだ担当医(通常は院長です)が継続して診療にあたること、診療プライバシーの保てる個室環境で時間をかけて対応する、患者さんの意向を尊重しつつ柔軟性に対応していくなど、様々な面でメリットがあると考えております。もちろん大学病院での治療が必要な場合はありますので、適時適切な連携を取れる体勢を整えております。
どんな検査をするのですか?痛くないですか?
基本的な検査は、問診・視診・触診、一般の歯科医院で行うX線撮影、必要な場合はCT撮影、細菌検査、細胞診などです。痛みを伴う検査は原則行いません。むしろ「お話を伺う」ことが一番重要な診察項目と考えています。
この痛みは治りますか?
基本的に痛みは良くなる症状です。ただし、正直に申し上げると、すぐに治るケースばかりではありません。ただ、痛みの原因を整理し、適切な方向へ導くことで「少しずつ楽になる」方が多くいらっしゃいます。焦りは禁物です。私たちは、回復の過程を丁寧にご一緒してまいります。
このままずっとこの症状と付き合うことになるのでしょうか?
そう思うお気持ちはよくわかります。ですが、原因や背景が明確になることで、多くの方が初診時に「希望」を取り戻しています。必要なのは、正しい理解と、その後の小さな改善の積み重ねです。
治療はどのように進むのですか?
症状、生活背景、既往歴、服用薬など様々な要素を勘案して治療方針を決定します。その後、お薬や日常生活の調整、口腔内の環境調整などを段階的に行います。あなたの状況に合わせて、無理のないペースで進めます。
薬は飲み続ける必要がありますか?
症状によっては一時的にお薬を使うこともありますが、多くの場合「一生飲み続ける」必要はありません。極力薬に頼らない方法を患者さんと一緒に模索していきます。必要な場合はお勧めしますが、その場合は、極力少量でなるべく優しいものを選択するように心掛けております。
何回くらい通えば良くなりますか?
通院期間は最低半年程度、概ね1年前後の方が多いです。個人差が大きいのですが、数年間通院するかたも少なからずおられます。最初の数か月は、月に2-3回の頻度で通院が必要な方がいますが、概ね、その後は月一回程度と徐々に通院の間隔は伸びていきます。診察でご病状の全体像を把握しながら、その都度、おおよその通院頻度をご相談することができます。強制的な通院を促したりすることはいたしません。
保険診療は受けられますか?
当院での歯科心身症の治療は自費診療のみで行っております。診察に十分な時間をかける必要があることと、保険の適応に囚われず医学的に必要とされるお薬を処方するためです。
今すぐ診てもらった方がいい症状はありますか?
本的に歯科心身症の場合は直ちに受診する必要性は低いことが多いです。特に、症状が出てから1週間程度の短期間の場合は、まずはお近くの歯科、口腔外科、耳鼻科などの受診をご検討ください。ですが、日常生活に支障をきたしている、仕事も家事も手につかないなど症状が強い場合は、早めにご相談いただいて構いません。概ね、症状が出てから1か月継続してくると、歯科心身症の可能性が高くなりつつあるとお考えになってください。
診察だけでも可能ですか?
もちろんです。「話だけでも聞いてほしい」「今の診断が合っているのか確かめたい」。そのような方にも、診察の価値があります。
紹介状が必要ですか?
特に内科や心療内科、眼科などに通院中でお薬を服用中の方は紹介状をお持ちいただくようお願いしています。お身体の状況を把適切に握しておくことは治療方針を決めるうえで大変重要です。もし通院中の医療機関がない場合は、紹介状は必ず必要というわけではありません。ですが、特に西洋のお薬を処方する場合は、できるだけ初診時に医科の紹介状をお願いしています。紹介状やかかりつけ医が無い場合は、初診時や治療の経過中に、必要に応じて近隣の内科へ採血など簡単な検査をするために受診をお勧めする場合があります。これらの点は初診前の電話相談で詳しくご説明させていただきま
男性の先生だと話しにくいかもしれません
当院では、安心してお話しいただけるよう、プライバシーに配慮した個室環境を整えています。また、女性の担当医を希望することも可能です。どうぞ気兼ねなくご相談ください。
遠方から通えますか
実際に都内以外に、他県から来られる方も多くいらっしゃいます。通院が負担にならないよう、間隔を調整するなど柔軟に対応しております。現実的には、関東圏か長野、静岡、新潟、仙台など新幹線を使用して数時間程度で通院可能な方が、治療を継続されているようです。
他院で「気にしすぎ」と言われて傷つきました
そのようなお気持ちはとても理解できます。痛みを「本人の問題」にせず、真摯に向き合うことが私たちの役割です。どうかひとりで抱え込まず、まずはお話をお聞かせください。
家族や周囲に理解されません
見た目に症状が出ないからこそ、理解されにくいのがこの病気の特徴です。私たちは“見えない苦しみ”に耳を傾ける数少ない立場だと考えています。場合によっては、ご家族と一緒に来院頂き、我々からご家族に丁寧にご説明することも可能です。こうしたことで、周囲の理解が深まることが症状改善に役立つ場合もあります。
「話すだけ」で本当に良くなるのでしょうか?
話すことは、痛みや不快感の原因を整理する上で非常に重要です。「気づき」が症状を軽くするきっかけになることは、実際によくあります。その一歩を、私たちが支えます

症状・鑑別に関する疑問

舌痛症とバーニングマウス症候群の違いは何ですか?
者は非常に近い概念ですが、舌痛症は国内で長年使われてきた病名で、バーニングマウス症候群は英語の病名の日本語訳で、舌に限らず、口全体に“焼けるような痛み”が出る場合に使用されることがあります。ただし、学術的にも明確な線引きはなく、舌痛症でも上あごや唇などに拡大する方もいらっしゃいます。症状、メカニズムなど実際には大きな違いはありませんので、患者さんはその違いを気にされる必要はありません。
非定型歯痛と非歯原性歯痛はどう違うのですか?
非定型歯痛と非歯原性歯痛の違いも、大きなディ買いはないと考えていただいて大丈夫です。正確にそれらの違いを患者さんが理解する利点はあまりありません。そもそも原因が歯であるか、そうでないかは、曖昧な症例も多く、原因が、口にあるかないかも含め、非典型的な痛みとしてとらえる「非定型歯痛」という言葉の方が我々は使いやすいと考えています。