舌痛症の治療法

舌痛症の治療法について

療法としては、一般的に、消炎鎮痛薬、ステロイド軟膏、うがい薬、保湿剤、ホルモン補充療法などが試みられることもあるようですが、あまり効果はありません。
あったとしても、多少いいかなという程度で効果がはっきりしません。
もちろん、先に触れた、他に舌に痛みを起こす病気がある場合は、このような治療も並行しておこないますが、舌痛症の本態には残念ながら効きません

文献
Moghadam-Kia S, Fazel N:A diagnostic and therapeutic approach to primary burning mouth syndrome. Clin Dermatol. 35(5):453-460,2017.
Gurvits GE(1), Tan A:Burning mouth syndrome. World J Gastroenterol. 19(5):665-72,2013.
McMillan R,et al:Interventions for treating burning mouth syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 11:CD002779, 2016.

当院で行う舌痛症の治療

舌痛症は、【生活指導・カウンセリング】と【薬物療法】が治療の中心になります。患者様の状態を見極めて、適切な治療を選択していきます。

薬物療法

現在では舌痛症には、鎮痛補助薬として主に抗うつ薬が使用されています。うつなどメンタルへの効果ではなく、慢性的な痛み(慢性疼痛)そのものに対する効果をねらったものです。お口の症状に抗うつ薬などと聞くと、強い抵抗感を抱く方が少なくないと思いますが、実は、抗うつ薬は、腰痛などの慢性疼痛や、片頭痛の予防薬としても、世界中で広く使われているのです。

舌痛症とは?でご説明したように、舌痛症が神経痛の一種で、脳の機能のバランスが崩れているためであると考えられており、理論的な点からも抗うつ薬の有効性が説明できます。
また最近では少量のメジャートランキライザーが有効とする報告も出てきています。

ですがこういったお薬への抵抗感が強い方には、漢方薬や神経障害性疼痛治療薬の処方など、患者さんの希望に合わせて臨機応変に検討していきます。

文献
Moghadam-Kia S, Fazel N:A diagnostic and therapeutic approach to primary burning mouth syndrome. Clin Dermatol. 35(5):453-460,2017.
Gurvits GE(1), Tan A:Burning mouth syndrome. World J Gastroenterol. 19(5):665-72,2013.
Toyofuku A:Psychosomatic problems in dentistry. Biopsychosoc Med.10:14,2016.
Yojiro Umezaki, Miho Takenoshita, Akira Toyofuku: Low-dose aripiprazole for refractory burning mouth syndrome. Neuropsychiatr Dis Treat.05:12 1229-1231,2016.
Miho Takenoshita, Haruhiko Motomura, Akira Toyofuku: Low-Dose Aripiprazole Augmentation in Amitriptyline-Resistant Burning Mouth Syndrome: Results from Two Cases. Pain Med.08,2016.

薬物療法の治療期間の目安

処方を開始してお薬が合ってきますと、約7割の方が1カ月くらいで痛みが治まってきます。

症状が改善しても直ぐに処方はやめない方が良いです。だいぶ楽になったなという時期から、さらに3~6カ月程度は、痛みや不快感のぶり返しがないよう服用を続けます。

症状が落ち着けば、徐々に減量して止めていくことができます。治療期間としては少なくとも半年間は必要で、多くの方が1年程度は通院を継続されています。

我々の調査では、お薬を継続できれば7割の方は改善します。基本的には治る可能性の高い病気ですので、ためらわずご相談されることをお勧めします

文献
渡邉素子、片桐綾乃、梅崎陽二朗、佐久間朋美、酒向絵美、吉川達也、竹之下美穂、佐藤佑介、豊福明: 歯科心身医療外来における初診患者1210名の臨床統計的検討 日歯心身27:37-43,2012.

生活指導・カウンセリング(認知行動療法も含めて)

実際に治療に入る際、ご病気の説明にじっくり時間をかけることも重要です。「原因」について、特に歯の治療が原因と考えている患者さんは、どのようなメカニズムで起きるかの正しい理解が重要です。

ご病気の説明を十分に受けられるだけで、「安心感から、帰りの電車の中で症状が軽くなった」と仰られる方もいます。

食事が摂れない、夜も眠れないといったことはまれで、元気な方も多く、外見からほとんど判断できません。周囲の方から、「気にしすぎ」、「メンタルの病気じゃないか」などと思われがちですが、 決してそうではありません。

「どこの病院でもなんともないといわれる」だけではなく、「家族や友達にも理解されなかったのでつらかったです」と仰られる方も少なくありません。特に高齢の患者さんにつきましては、ご家族が付き添っていただき、一緒にご説明を聞いて頂くようお願いしています。

また、十分な睡眠、食事など規則正しい生活、心身の疲労をためない、適度な運動をするといった、ごく一般的なものです。これらが、お口の痛みや感覚の乱れにも影響すると考えているのですが、案外できいない方も多いものです。

あまりに辛いときは、可能ならご家族に家事の分担を頼んでみるとよいでしょう。こうしたご家族のサポートも回復によい効果をもたらすとされています。

治療者と患者さんご本人、ご家族を含めた情報の共有、病状の共通理解が治療開始にあたっての最も大事な点です。

また、世界的にも認知行動療法など心理療法が有効とする報告が多くあります。ただし、舌痛症の患者さんの多くを占める中高年の方々には中々なじみにくいことが多い印象です。

心理療法のそれとは気づかない程度の日常生活の過ごし方、症状の捉え方など、ちょっとした「アドバイス」が適切ではないかと考えています。

より専門的な心理的アプローチが有効と思われた方には、信頼する専門家をご紹介することもあります。

文献
Matsuoka H,et al : Cognitive behavioral therapy for psychosomatic problems in dental settings. Biopsychosoc Med. 14(1):1186-1192,2017.
五島史行、中井貴美子、小川郁:総合病院耳鼻咽喉科における心身症の割合と心療耳鼻咽喉科医の必要性 心身医学 50(3),229-236,2010

舌痛症の症例

舌痛症の治療について、皆さんに具体的にイメージしやすいように、代表的な治療例をご紹介してみようと思います。 ただしあくまでも、例の一つです。患者さんによって、治療の内容や経過については大きな幅がありますのでご了承ください。

舌痛症の症例

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