舌痛症の症例②
症例② 50代女性。東京都〇〇区在住。職業:主婦 平成〇×年△月初診
舌の真ん中と先がヒリヒリしびれたようで、毎日カレーを食べているよう。夕方から特に痛くなる。首から肩も凝って痛くなる。左下のブリッジの治療をしてから始まった。
診断
舌痛症
治療
薬物療法および症状への対処法や生活指導などのカウンセリング
病歴
当院初診2年前の歯科治療後に発症した典型的な舌痛の症例。地元歯科医院で食いしばりを避けるように指導されたが効果なく、歯科治療は中断となった。その後、気分不良に陥り大学病院内科でのCT、MRI精査も異常なく安定剤が処方されたが効果は無かった。更年期を疑い婦人科でホルモン療法を受けるも症状は変化しなかった。また、近医耳鼻咽喉科では亜鉛や唾液量の検査もしたが異常なく筋肉の緊張を緩和するお薬を処方されたが変化は無かった。同耳鼻科から紹介にて当院初診となった。
治療経過
口腔内の丁寧な診査、X線撮影、口腔内写真撮影、唾液量検査、病歴聴取、生活状況などの問診を行った。治療途中のブリッジは除去され仮歯が装着されたままであった。その他の口腔内に症状に相応する所見は認められず、夕方から夜間に悪化、食事中や飴やガムを口にするとはまぎれる、時に口蓋粘膜にも拡大するなど症状の変動性を認め、訴えの性状、慢性の経過から上記診断となった。舌痛症についての病態と治療方法、治療に伴うリスクとベネフィット、大まかな治療期間や通院頻度などについて説明を行い、同意を得たため、ごく少量の鎮痛補助薬の処方を開始した。
症状の程度は中等度ではあったが、治療開始1か月で当初の約40%まで痛みは軽減した。しかしながら、服薬に伴う軽度の眠気や便秘などの副作用が出現した影響で症状経過に波が起こり、以降5種類のお薬の変更を行いながら慎重に治療を継続した。徐々に副作用は消失するとともに、治療開始4か月で当初の20%まで症状は軽減した。最終的には治療開始後半年で処方が安定し、症状は当初の10%まで改善した。症状安定を確認したため、仮歯のブリッジの治療再開を許可し、近医で新製されたブリッジが装着されたが、舌痛が再燃することはなかった。歯科治療終了後もさらに症状は改善し、治療開始後1年でほぼ症状は完治した。その後、処方は徐々に減量したが再燃なく、経過良好のため治療開始後1年5か月で治療終了となった。
グラフ 縦軸(VAS)、横軸(週)
VAS(Visual Analogue Scale)=一番ひどい症状を100として、現在の症状がどの程度かを患者さんが視覚的に指示したものを数値化したスケールです。